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福井地方裁判所 昭和48年(モ)121号 判決

申請人

高原一郎

右訴訟代理人

伊神喜弘

外二名

被申請人

右代表者

稲葉修

右指定代理人

榎本恒男

外一〇名

主文

一、 (昭和四八年(モ)第一二一号事件)につき

(1)  申請人と被申請人間の福井地方裁判所昭和四七年(ヨ)第九二号地位保全等仮処分申請事件につき、同裁判所が昭和四八年三月一二日になした仮処分決定を取消す。

(2)  申請人の右仮処分申請を却下する。

二、(昭和四八年(ヨ)第一〇八号事件、同五〇年(ヨ)第四号事件)につき

本件各仮処分申請を却下する。

三、訴訟費用は申請人の負担とする。

四、この判決は第一項(1)に限り仮に執行することができる。

事実

第一  申立

一、申請人

申請人は、昭和四八年(モ)第一二一号事件につき「一、申請人と被申請人間の福井地方裁判所昭和四七年(ヨ)第九二号地位保全等仮処分申請事件につき同裁判所が昭和四八年三月一二日になした仮処分決定を認可する。二、訴訟費用は被申請人の負担とする。」、同年(ヨ)第一〇八号事件につき「一、被申請人は申請人に対し、金一二万七、二三〇円および昭和四八年一〇月以降本案判決確定に至るまで毎月九日および二四日限り、それぞれ金七、三六一円を仮に支払え。二、申請費用は被申請人の負担とする。」、同五〇年(ヨ)第四号事件につき「一、被申請人は申請人に対し、金一〇万二、八二〇円および昭和五〇年一月以降本案判決確定に至るまで毎月九日および二四日限り、それぞれ金五、五九〇円を仮に支払え。二、申請費用は被申請人の負担とする。」との各裁判を求めた。〈後略〉

理由

一郵政省の臨時雇の法的規制

1  申請人の福井局における身分

申請人が昭和四六年一一月六日から同四七年七月一日の間福井局の集配課または郵便課で勤務していたこと、右当事の同人の身分は郵政省の非常勤職員中の臨時雇(以下「臨時雇」という)であつたことは当事者間に争いがない。

2  郵政省における一般職に属する非常勤職員である臨時雇の国公法その他公法上の地位の概要

そこで臨時雇の任免手続・任用期間等につき法規の規定を概観すると、国公法附則一三条本文は、一般職に属する職員に関し、その職務と責任の特殊性に基づいて同法の特例を要する場合においては、別に法律または人事院規則(以下「人規」という)でこれを規定することができるとしている(この規定は一般職につき国公法五九条の条件付任用および同法六〇条の臨時的任用以外の任用形態を認めている趣旨と解される)。また人規八―一四(非常勤職員等の任用に関する特例)一条は非常勤職員の採用は競争試験又は選考のいずれによらないでも行うことができる、人規一五―四(非常勤職員の勤務時間及び休暇)は非常勤職員は日々雇い入れられる職員とその他の職員に分類され、更に人規八―一二(職員の任免)七四条一項三号は「任期を定めて採用された場合において、その任期が満了した場合その任用が更新されないときは、職員は当然退職するものとする」と規定し、〈証拠〉によれば、郵政省は、前記国公法及び人規を受けて非常勤職員任用規程(昭和三五年九月二六日公達第五二号、同三七年一〇月一日施行、以下「任用規程」という)を定めて非常勤職員を事務嘱託以下六種類に分類し、そのうち臨時雇は中学卒業程度以上の学力を有する者の中から面接試験及びその他必要と認める方法により事務の臨時的繁忙、職員(常勤職員)の一時的欠務等の場合において通常の事務を処理するため短期間雇用するものとして任用されることと定める外、人規八―一二第七四条二項の特別規定として「臨時雇の任期は一日とする。但し、二カ月以内において任命権者が定める期間を予定雇用期間とし、当該期間内においては、任命権者が別段の意思表示を行なわない限り、その任期は更新されるものとする。」と規定している。

また、郵政省非常勤職員任用規程の運用について(以下「任用規程の運用」という)(昭和三五年一〇月二〇日郵人第七二五号)では任免の手続につき人事異動通知書の交付を省略し、臨時雇に辞令簿に押印させることにより通知書の交付に代えることができること、なお臨時雇についてはいかなる場合においても予定雇用期間を更新し、または延長することができないものとすると規定していることが認められる。

以上の国公法、人規、郵政省の任用規程等によれば郵政省非常勤職員である臨時雇は任期を一日とするが予め定められた予定雇用期間二ケ月以内においては任命権者が別段の意思表示をなさない限り任用が更新されるけれども、予定雇用期間満了時には、再任用されない限り当然退職するという法規制を受けていることが明らかである。

申請人は人規八―一二第七四条二項は、予定雇用期間経過後における自動更新規定でもある趣旨の主張をするけれども、右主張は採用できない。

二郵便事業に従事する現業国家公務員の勤務関係の法的性質

1  そこで次に郵便等の事業に従事する現業国家公務員の勤務関係の法的性質について判断する。右事業は公権力の行使を伴う一般行政作用とは異なり、またここに勤務する職員は公権力の行使と何ら無関係の経済活動に従事することを職務内容としている点で公共企業体職員との間に何ら差異はないといえること更に実定法上右事業に従事する職員は一般職に属する国家公務員の身分を有するが(公労法二条二号)、労働関係については公共企業体の職員と同じく公労法が適用されるから労組法、労基法、労調法、最低賃金法が適用され(公労法四〇条、国公法附則一、六条)賃金その他の労働条件に関する事項は団体交渉の対象とされ、労働協約を締結することができる(公労法八条)こと、以上の点から考えれば、郵便事業に従事する現業国家公務員の労働関係は、基本的には公共企業体の職員のそれと異るところがない。

しかしながら、一方において現業国家公務員は前記のとおり一般職に属する国家公務員で「全体の奉仕者」として勤務することを要請されているところから(憲法一五条二項)任免(身分の得喪)分限、懲戒及び身分保障、服務関係等については、国公法および人規の各規定がほとんど適用され(公労法四〇条、郵政省設置法二〇条)その限りにおいて公法的規制が加えられているのである。

従つて、現業国家公務員の基本的勤務関係である前記任免(身分の得喪)分限等に関する限りは非現業国家公務員と同様、公法的規制の下に置かれる公法関係といわざるをえない。

2  そこで右郵政現業国家公務員中の臨時雇の勤務関係の法的性質について検討するに、これまた基本的には右同様公法関係と考える外はない。即ち国公法二条四項は一般職に属するすべての職員に国公法を適用する旨規定し、常勤職員たると条件付任用者(同法五九条)臨時的任用者(同法六〇条)たると、また同法附則一三条に基づき人規の規定により任用される非常勤職員たるとを区別せず、国公法を適用するとしており、非常勤職員の身分関係即ち任免、分限、懲戒および服務等についてはいずれも国公法および人規の定めによることとされており、また郵政省設置法二〇条も常勤職員、非常勤職員を区別せず職員の任免等につき国公法によると規定していることからすれば郵政現業国家公務員中非常勤の臨時雇についてもその基本的な勤務関係である任免、分限、懲戒等に関する限り国公法、人規等の公法的規制の下に置かれる公法関係であるというべきである。

三本件各仮処分申請の適否

以上に説示した臨時雇に対する法規制、基本的勤務関係の公法的性格にかんがみると臨時雇はその予定雇用期間満了後は再任用されない限り、臨時雇の身分を喪失し当然退職となると解するのが相当である。

しかして現業国家公務員である臨時雇の基本的勤務関係が公法関係であることにかんがみると申請人主張のように再任用拒否が解雇であるとの立場に立つても右行為は免職という行政処分という外はなく、行訴法四四条にいう行政庁の処分に当る行為であり、被保全権利たる公務員の地位確認を求める本案訴訟が公法上の実質的当事者訴訟であるとしてもかかる行為を阻害する仮処分は右法条の趣旨にかんがみ許されないものと云うべく、まして当裁判所の前記判断のように現業国家公務員である臨時雇の公務員たる地位は再任用されない限り予定雇用期間満了によつて当然に終了すると解する以上本件仮地位仮処分申請は行政庁に代つて、再任用という行政処分を仮にすべきことを求めるものに外ならず、かかる行政庁に代つて行政処分を行うこととなるような仮処分ないし右仮処分を前提とする賃金仮払の仮処分は、行訴法四四条の趣旨にかんがみ許されないこと多言を要しない。これに反する申請人の主張は採用できない。

従つて本件各仮処分申請はいずれも違法として却下さるべきであり、原決定は取消さるべきものである。

もつとも、申請人は、臨時雇が仮りに形式上は公法の規制を受けるとしても、それは全くの形式にすぎず、形骸化されており、任用手続も極めて杜撰かつ疎漏であり、かつその実際の運用及び勤務の実態に着目すると期限の定めなき雇用として、常勤化現象が顕著であり、その意味においては実質上私法関係と目すべきである旨の主張と解される主張をするので以下右主張に対する判断を示す。

四申請人の福井局における任免手続

1  〈証拠〉によれば申請人の任免関係は次の通りであることが認められる。

(1)  集配課

昭和四六年一一月六日、日給一、二四〇円で予定雇用期間(以下「期間」という)を同四七年一月五日までとして任用され、右期間満了により免ぜられ(以下「解免」という)同一月一〇日、同一日給で期間を三月九日までとして任用され右期間中の同二月二五日中途解免、同月二九日同一日給で期間を三月三一日までとして任用され、右期間中の同月三〇日中途解免、四月一日時間給一八五円で期間を同月二八日までとして任用され、右期間満了により解免、五月二日同一時間給で期間を七月一日までとして任用され、右期間中の五月九日中途解免、同月一〇日同一日給で期間を同日限りとして任用され、同日解免、翌五月一一日前同一時間給で期間を七月一日までとして任用され、翌一二日中途解免、翌一三日前同一日給で期間を七月一日までとして任用され期間満了で解免され、その后再任用されていない。

(2)  郵便課

一方郵便課では、四月一日時間給一九五円で期間を六月三〇日までとして任用され、右期間中の四月七日中途解免、同月二〇日同一時間給で期間を六月一九日までとして任用され右期間中の五月四日中途解免、五月二〇日同一時間給で期間を六月一九日までとして任用されその後は任用されていない。

なお、昭和四七年六月二九日付で、申請人に対する再任用拒否通告がなされていることは当事者間に争いがない。

(3)  以上認定の事実によれば申請人は昭和四六年一一月六日福井局の集配課で日給をもつて任用されて以来、同課または郵便課で日給または時間給で任用され(但し郵便課は時間給のみ)その後同四七年一月六日から同月九日、二月二六日から同月二八日、三月三一日(いづれも被申請人主張の中断期間)を除き、同年七月一日まで任用され、その後は再任用されていないことが明らかである。

してみると、申請人の任用手続は辞令簿上は適法に行われ、昭和四七年七月一日の満了(郵便課は六月一九日の満了)を以つて当然退職したものというべきである。

五申請人は辞令簿は全くの形式にすぎず、実際の任用手続については、当初の任用に際し、予定雇用期間内における雇用である旨の説明を受けたことはなく、かつ、予定雇用期間満了時における再任用手続も極めて形式的になされ、辞令簿に対する申請人の押印も、申請人が辞令簿を確認する機会を与えられずに、上司の手により行われたと主張し、〈証拠〉中には、右主張にそう部分が存するけれども、これら部分はたやすく信用し難は、他に右主張を認めるに足りる的確な証拠は存しない。

却つて、〈証拠〉によれば、申請人は任用の当初において、申請外野口課長代理から予定雇用期間は二カ月であることの説明を受け、かつ人事異動通知書の交付に代えて辞令簿に直接押印を求められ、押印したこと、再任用手続における辞令簿に対する押印も右と同様に(たとえ直接押印でないときがあつたとしても、辞令簿の内容を諒知の上)なされたことが認められるから、申請人の任用手続は実際上も適法に行われたというべきである。

もつとも〈証拠〉によれば、再任用手続における辞令簿の作成、これに対する申請人の押印手続が再任用の日より後になされたこともある形跡が数回存すること、ないし、再任用に先立つて置かるべき中断期間(〈証拠〉によれば郵政省では通達により再任用については原則として七日、やむを得ない場合は三日の期間を置く方針をとつていることが認められ、これを中断期間という)の設定等が必ずしも正確に行われておらず、例えば昭和四七年二月二六日から同二八日までは間に週休をはさみ申請人の私欠であり、同年四月二九日から同年五月一日まではうち二日が祝日および週休日であつて任用規程、同規程の運用にいう中断期間となしえない日を中断期間となした取り扱いをしていたことが認められる。

しかしながら、これら事実は福井局における臨時雇に対する人事管理の不備を示すものではあるが、これらの不備があつたからとて直ちに申請人に対する従前の任用手続の違法、無効を招来したり申請人の臨時雇の法的地位に変動を及ぼすものとは解し難い。

申請人主張の集配課における時間給への切替及び日給への切替手続の不備が仮に存したとしても、それは支払賃金額の当否の問題にすぎず、申請人の任用手続に法的変動を及ぼすものとは考えられない。

六申請人は、予定雇用期間の更新が繰り返されたことにより当然に期間の定めのない臨時雇になつた趣旨の主張をするけれども、私企業とは異なり公法関係としての法規制を受ける現業公務員としての臨時雇の期限付任用がたとえ長期間更新されたからといつてその任用が私法関係に変ずるとか期限付任用の性質を変ずるとかするものではない。

期限付任用と、任期の定めのない任用とは、性質を異にする別箇の任用行為であり、常勤職員の期限の定めのない任用行為は、厳格な要式行為であるから(人規八―一二第七五条一号)、任命権者による任期の定めのない職員への任命行為がなければ、任期の定めのない職員への任命が有効に成立しうる余地はないからである。

七申請人は、臨時雇の雇用の実態は、本務者採用を前提とした試用期間として利用され、本務者になるまで雇用が自動的に継続され、従つて臨時雇の常勤化現象が顕著であり、この実態に着目すると、形式はともあれ実質的には臨時雇は期間の定めのない雇用と目すべきであり、従つて再任用拒否は解雇に外ならない旨主張する。

然しながら、たとえ臨時雇の常勤化現象が申請人主張のとおり顕著であつたとしても、それだけの理由で公法関係として国公法等の規制を受ける郵政公務員の臨時雇の身分が私法関係に変ずるいわれはないし、また正規の法的手続を経由することなく、卒然として期限の定めない任用にその性質を変ずるいわれもないことは多言を要しないところであつて右のような臨時雇の常勤化現象は、そもそも法の予定していないところなのであり、この不合理を解決するには臨時雇の任用についての人事管理上の運用面での合理化ないし臨時雇の常動化を前提とした特別立法による外はないのである(〈証拠〉(全逓労組作成非常勤白書)も同趣旨の見解を述べている)。

八以上の次第であつて、臨時雇の任用手続の実際、勤務の実態に照らしてみても、臨時雇の任免が実質上私法関係と目すべき理由は見当らない。

九(結論)

してみると、その余の申請人の主張につき判断するまでもなく昭和四八年(モ)第一二一号事件につき、申請人の本件仮処分申請を認容した原決定は違法であるから取消し、右仮処分申請を却下すべく右原決定により地位が保全されていることを前提にしてなされた昭和四八年(ヨ)第一〇八号および同五〇年(ヨ)第四号の各賃金仮払仮処分命令申請も、同様に却下すべきである。

よつて訴訟費用につき民訴法八九条、仮執行の宣言につき同法七五六条の二を適用して主文のとおり判決する。

(松本武 川田嗣郎 桜井登美雄)

【参照】 原決定

(福井地決昭和四八・三・一二)

第三 当裁判所の判断

一、二〈略〉

三、郵政省非常勤職員の法的性質

1 国家公務員法(以下国公法という)上には一般職々員につき期限付任用の許否についての明文の規定はないが、これを禁止していると解される規定も存しないし、また一般的にこれを禁止しなければならない合理的理由もないから、期限付任用を必要とする特段の事由が存し、且つ、任期を定めることが国公法一条一項の目的に反しない場合には許されると解する。本件臨時雇は前記の如く臨時的繁忙、職員の一時的欠務等の場合に郵便等の事務を処理するために任用するものであるから、期限付任用を必要とする特段の事由が存し、かつ任期を定めることが国公法一条一項の目的に反せず許される場合と解する。

2 ところで右の臨時雇も公共企業体等労働関係法(以下公労法という)二条一項二号イに規定する郵便等の事業に勤務する職員(現業郵政職員という)であるが、右事業が公権力行使を伴なう一般行政作用とは異なり、郵便等の経済的役務の提供を目的とする企業活動であるので、右職員の職務も当然公権力の行使とは関係なく、単に経済活動に従事することをその内容とするにすぎず、かつ右現業郵政職員は公労法の適用を受け、同法により労働組合法、労働関係調整法、労働基準法などの適用を受け(公労法四〇条一項一号)労働条件に関して団体交渉権及び労働協約締結権を有する(公労法八条)しかも非常勤職員については、任用期間に特に制限はなく一日とすることも可能であるから、こと任用期間に関しては国と労働者とは自由に取引することが認められていると解されるので、非常勤現業郵政職員に関する限り、その勤務関係形成の端緒は、国公法上の任用ではあるが、右任用は私法上の労働契約の一方当事者として相手方の申込に対してなす承諾以上の意味をもたず、ここに私法上の契約原理の適用があると解する。

四、そこで本件臨時雇は前記期間の満了によつて当然終了するかについて検討するに、期間の定めのある労働契約においても、雇用期間が反覆更新され、雇用期間満了後も使用者が労働関係を継続すべきことを期待することに作業の内容並びに過去の実績等からみて合理性が認められる場合には、使用者が更新を拒絶することは実質上、解雇と同視すべきであり、このような場合には解雇に関する諸法則を類推適用するのが相当である。

疎明資料によると次のことが認められる。

1 申請人は郵便局の前に外務員募集の看板が出ていたのを思い出し、昭和四六年一一月四日、被申請人局を訪れ同局に勤めたい旨申し出たが、採用試験はすでに終つており、次回は来年七月ごろになること、しかし臨時雇ならば任用できる見込みがある旨説明をうけ、翌五日再び同局に訪れたとき同局係官から臨時雇の職務内容、勤務時間、賃金について説明をうけ、その際、臨時雇にはなるが真面目にやつていれば、そのうち本採用になれること、また採用の際には働いていた方が優先されるなどの説明を受けたこと、しかしその際雇用期間等についての説明は受けなかつたこと

2 前記の如く予定雇用期間満了後は、中断期間をおいて新らたに任用した形式をとつてはいるが、一月六日から八日までの中断期間は正月三ケ日の代休として考えられていたこと、また二月二六日および二八日については、たまたま申請人において自己都合で欠勤した日をもつて中断期間とし、四月二九日から五月一日までの中断期間はそのうち二日は休日であるなど、一応中断期間を設けてはいるものの、当事者間においては、契約関係そのものを中断する意思はなく、申請人においては休日をとつている意識しかなく、また被申請人局でも形式を整えるだけの意識しかなかつたこと

3 また前記の如く臨時雇は臨時的繁忙、職員の一時欠務等の場合において郵便等の事務を処理するために任用するものであり、本件任用も職員の欠務後補充又は年末年始の一時的繁忙を理由になされるものではあるが、しかし職員の欠務は全体としては恒常的に存在するため、被申請人局においては常時臨時雇を数名雇入れていて、相当期間継続的に雇用していること、そして臨時雇が臨時補充員又は正規の外務職員任用の大きな供給源となつており、被申請人局もそれを期待し、特に臨時雇の任用期間等について告知することもなく、かえつて、まじめに働いていれば、正規職員への道が開けるから、まじめに働いているように指導し、正規職員として必要な知識等についても教育、指導していること、

4 申請人が予定雇用期間満了を理由に解免された七月一日現在欠務発生の見込があり、臨時雇の任用の可能性はあつたこと、また申請人につき特に勤務態度等には問題がなかつたこと

以上の事実を総合判断するに、本件臨時雇の予定雇用期間満了の七月一日現在において、申請人に、右期間満了後において労働契約を継続すべきことを期待することに合理的理由があると認められる。

そこで本件更新拒絶の真の理由を検討するに、疎明資料によると、申請人は昭和四七年六月一五日被申請人局における臨時補充員の採用試験に受験し不合格になつたが、その結果本採用の見込みがないと判定され、従つてさらに長期に臨時雇として雇用するのは好ましくないと考えられたこと、しかし前記臨時補充員採用試験不合格者はすべて更新拒絶されるのではなく、さらに受験の機会が与えられ引き続き臨時雇として雇用されており、右不合格が直ちに本採用見込なしと通常考えられておらないこと、申請人の勤務態度等については問題がないこと、従つて本採用見込なしと判定された理由は臨時補充員採用試験の状況等からすると、申請人が過去に生徒会役員として活溌に活動していたこと等申請人の思想、信条が好ましくないとされたためであることが認められ、右の如き不合理な理由でもつて更新を拒絶することは許されないと解する、よつて申請人は昭和四七年七月二日以降も臨時雇としての地位を有する。そして、申請人は昭和四七年六月下半期分以降の賃金の支払を受けていないので、結局被申請人は同年七月以降毎月九日と二四日限りそれぞれ一四、七三九円を支払う義務がある。

五、仮処分の必要性

疎明資料によると、申請人は賃金を唯一の生活の資とするものであるから、本案判決を待つていては申請人の生活は回復し難い損害を蒙むることが認められ保全の必要性がある。

六、よつて申請人の請求はその余の判断をするまでもなく理由があるので、認容し、訴訟費用については民事訴訟法八九条を適用して主文のとおり決定する。

(青山邦夫)

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